テレワークを導入する際に参考になるのが総務省の「テレワーク導入手順書」や「テレワークセキュリティガイドライン」「テレワーク実践事例集」等がある。特にテレワーク導入手順書にはテレワークのポイントやこれから取り組む場合の手順などが記載されている。
「情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書(総務省)」より抜粋
理想的にはこのような手順で導入することが望ましいが、コロナ禍のように環境変化によって急にテレワークの活用を迫られた場合などは、どこから手を付けてよいか分からず導入目的を明確化することは難しい。
モンスターを何匹退治しているか ~ITリテラシーを見極める
テレワークに限らずIT利活用で問題になりやすい事項として、会社としての環境整備は行ったとしてもそれを運用し続けられないという事象があげられる。いわゆる「ITリテラシが伴わない」という状況だが、テレワークにおいてもITリテラシが伴わなくては、どのような仕組みを入れたとしても運用し続けることは難しい。
テレワークに耐えられるかどうかは「従業員が通勤途中で何匹のモンスターを退治しているか」で考えてみたい。これは私が実際に通勤風景を観察した印象だが、バス・地下鉄の中でスマホを操作している人の割合は少なくて6割、多い日は8割程度である。ニュースを読む人、メールをチェックする人、動画を鑑賞する人もいるが、最も多いのはゲームをしている人のように感じる。複数のゲームを切り替えながら次々とクリアしている人もいるが、自社の従業員も同じように数多くのゲームでモンスターを倒し、世界を救っているのではないか。もし、そこまでスマホを活用する能力があれば、一定レベルのITリテラシーは備わっているので、「テレワーク導入に耐えられる能力が備わっている」と判断してよいだろう。
何もできない時間があるか ~生産性が向上する余地があるか
テレワークという新しいことに取り組むのであれば、その投資に見合うだけの収益が確保できることが必要である。テレワークに取り組むことで売り上げを拡大することイメージしにくいが、時間を短縮し生産性向上に繋げることはイメージしやすいだろう。となると、短縮できる時間が存在するかがポイントになる。そのような時間が存在するかどうかは「渋滞に巻き込まれて無駄な時間を過ごしていないか」「何もすることがない待ち時間・移動時間が存在しないか」等で考えてみたい。もし、渋滞に巻き込まれているのであれば、通勤前に自宅で仕事に取り組むことで「通勤時短の短縮」と「作業時間の確保」を両立させることができる。
「テレワークで何をするか」から考え始めると「何に取り組むのか・どこから取り組むのか」を決めきれなくなってしまうが、「短縮できる時間があるか」から考え始めることでテレワークを活用する余地があるかどうかを判断することができる。