昨年令和5年のの合計特殊出生率が1.2まで低下した。一昨年は過去最低に並ぶ1.26だったが、低下傾向に歯止めが全くかからない。
合計特殊出生率は様々な要因が影響しているが、先進国は軒並み低下傾向にあるので 「先進国なので減少止む無し」的な論調も多い。
確かに大きな流れで見ると「日本を含めて先進国は合計特殊出生率が減少傾向」ということに異論はないが、短い期間でみるとそれが成り立たないこともある。
2005~15年は何故上昇したか
「一昨年は過去最低に並ぶ1.26」だったが、それ以前に1.26になったのが2005年である。
当時は合計特殊出生率を改善するために様々な政策が打ち出されており、1995~1999年のエンゼルプラン、2000~2004年の新エンゼルプラン(重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について)が実施されている。
その後、2003年には少子化対策基本法、次世代育成支援対策推進法も整備され、2003年から10年間に渡り少子化対策が実施された。
これが功を奏したのかどうかは定かではないが、合計特殊出生率は2005年で下げ止まり、その後2015年にかけて上昇傾向に転じている。
10年間に渡って上昇したということは、何らかの要因があるはずである。
2015年に何が起きたか
2015年はアベノミクス新三本の矢が発表された都市である。この三本の矢の一つが「合計特殊出生率1.8を目指す」であり、育児・子育ての施策が手厚くなったことは実感として感じている。
施策が手厚くなったのにも関わらず、2015年以降の合計特殊出生率は減少に転じ、一度も上昇することなく今に至っている。
分析・評価はなされているのか
この結果だけをもって「安倍政権が合計特殊出生率を悪化させた」等と断ずるつもりはない。
しかし、2005年から10年間に渡って上昇した理由、2015年以降は一貫して低下した理由は何かあるはずである。
特に2005~15年に上昇した理由に関しては様々な研究もなされたようだが、「この10年間に限って上昇したことと、その後は減少に転じたこと」の両方を明確に示した研究結果を見つけることはできない。
国立社会保障・人口問題研究所
野村ホールディングス
どこかでは十分な分析・評価を行っており、それを踏まえた上で現在の少子化対策が練られているのかもしれない。が、そのような根拠を持っているような話が出ることもなく、成果が出なかった施策を更に余計な飾りつけをして繰り返しているように見える。
このようなことが繰り返されるのは少子化対策に限ったことではない。身近のところでも「分析する・評価する」が十分に行われないことは多く、むしろ、「分析・評価」することの方が珍しいのではないかとも感じる。
論理的な根拠をもって分析・評価をしていないので、「反省して改善する」も論理的というより、情緒的になりがちである。これは少子化対策に限らず、日本人の思考に共通する悪い側面のように感じる。