ノーコード・ローコード開発の弊害が表面化し始めた

ノーコード・ローコードのメリット・デメリット

DXを推進する手法の一つとしてノーコード・ローコード開発が取り上げられることが多い。
プログラミング等の専門知識がなくてもシステムを構築できる点や、画面の視認性や操作性を確認しながらシステムを構築できる等は低価格で手軽にシステム化を進められるという利点に繋がっている。

同じように入力したデータを簡単に加工する手法としてEXCELやACCESSを活用する事例もある。こちらは「属人化する」「スパゲッティ化する」等の理由で多用するほど問題が広がる事例が多かったが、ノーコード・ローコード開発においても同じような問題が散見されるようになっている。
やはり、気軽にシステム化するということは同じ課題があるといってよいだろう。

ローコード開発が広く浸透した事業者の事例

ある企業の支援事例であるが、ローコードツールを社内で多用してデジタル化を推進してきた結果として「アナログ処理はほぼなくなった」が、各部門の担当者単位でデジタル化が進んだために「会社全体として必要なデータが得られなくなった」ということがあった。

この状況を改善するために作成済みのローコードシステムを見ながら業務フローを図式化し、データ収集方法を再検討するという対応を実施した。
ローコード開発されているのでデータの流れを分析するのは容易であったが、データチェックを画面で行うものもあれば内部で変換するものも混在したため、最終的にはローコード開発したほぼ全てのモジュールを分析、文書化しなければならなくなった。

ノーコード・ローコード開発の進め方

上記の事例をもって、「ノーコード・ローコード開発も全て文書化すべき」という主張も出てきそうだが、誰でも気軽にシステム化できるというメリットを生かすためにはこのような対策は適切でないケースも多い。特に、「気軽に触れることでリテラシの向上に繋げたい」というフェーズにおいては「仕様を検討し、それを文章化してから開発に着手」という進め方はなじまない。

ではどうすればよいかというと、残念ながらこの対策を体系的にまとめるには至っていない。
ある程度専門的な知識を持っている人であれば「ノーコード・ローコード開発と基幹系はこのようにすみ分けましょう」というルールを提示することで問題を回避できる可能性は高い。
ただし、これを専門知識の乏しい人に要求すると気軽に開発することをためらい、デジタル化のすそ野を広げることを制限することに直結してしまう。
現時点での現実解はある程度ノーコード・ローコード開発を自由にさせ、定期的に開発したものを検証し、デジタル化の広がり方に応じて対策を講じるということにならざるを得ない。