バイト意識の変化と社員教育の在り方(日経MJ 2/15より)

2019/2/15付の日経MJ新聞に「バイト選び スキル目的」という記事があった。これは学生がバイト選択する際の基準として「スキルの習得」を意識する傾向が強くなってきたということを指している。以前は「稼げる」が重視されたが、それが「かっこよい」に代わり、最近は「スキルの習得」を重視するように変わっているらしい。

「スキルの習得」を目指すという意識は素晴らしい。が、若干気になることもある。
バイトにおいては「労働力を提供する対価として報酬を得る」が、今は「労働力を提供する対価として報酬もスキルも得る」ことを目指している。「費用を払ってスキルを得る」はずが、「報酬を貰ってスキルを得る」という感覚は違和感を感じる。
穿った見方をすれば「働いて報酬を得るだけでなく、スキルも身につくのが当然」「報酬だけでなくスキルも身につけさせてくれるもの」というような意識変化を誘発しないか?

「新聞記事を斜めに解釈しすぎ」と思われるかもしれないが、昨今の企業研修でもこのような傾向は強くなっている。
若手社員の研修を担当して10年近くたつが、その中でも変化は出始めている。研修の中で難しい課題を課し、それが解決しない場合に、従来は「課題が難しく解決できなかった」「力不足だった」という感想だけだったが、最近は「解決できるように指導してもらえなかった」「時間内に正解をにたどり着くようなスケジュールになっていなかった」というような感想が増え始めている。
(全く同じ課題を与えてもこのような感想の違いが出ているので、講座の難易度ではなく受講生の変化であることは間違いない)

受講生も変化しているが、教える側(研修機関・講師)も変わってきている。
受講生のアンケート評価を意識し「覚えさせることよりも楽しませることを重視」「スキルを身に着けることよりも身に着けた気にさせることを重視」する研修機関・講師も増えている。
より良い研修にするためにアンケートを用いることは適切な取り組みであり、嫌々研修を受けるよりも少しでもやる気が出るように仕向けるもの間違いではない。
が、「なぜ研修を受けさせるのか」「研修を実施した先に何を目指すのか」という目標がなくなり、「受講生を育てること」よりも「良い評価を得ること」が中心になることが増えている。
指導する側にこのような意識が蔓延しては、指導される側が「理解できないのは自分の責任ではなく、指導する側の問題」と感じるようになっても不思議はない。

では、研修を行う際に何を重視するか...というと「自分で覚える」という前向きな姿勢を持たせること、分からないことに対して真摯に取り組む「探求心を育むこと」にある。
研修機関も講師もそうだが、企業研修の担当者、その担当者を評価する人もここから見直さないと、「暗記できるように教えてくれない会社が悪い」という社員だらけになりかねない。