元日の新聞紙面から見た2024年

2024年1月1日発行の主要全国紙「産経新聞・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞」といつも愛読しているを「日本経済新聞」を読み比べて、その主要記事、社説、ポイントをまとめてみた。
例年、元日の新聞は読み比べているが、今年の大きな特徴としては「四紙全ての一面に政治とカネ」が掲載されていることである。

  • 森元首相の関与有無 解明へ(産経新聞)
  • 安倍派100人不記載疑い(読売新聞)
  • 還流仕組み幹部共有か(毎日新聞)
  • 安倍派中抜き裏金8000万円か(朝日新聞)

時代の動きを反映して論点が類似したり、二紙位であれば同じテーマを扱うことはあったが、四紙揃って同じテーマが一面を飾ったというのはちょっと記憶にない事象である。

産経新聞

「内向き日本」では中国が嗤う

一面に掲載された榊原論説委員による「年のはじめに」では、平和のためには従来のような日本の態度では不十分であることを述べている。
昨年の元旦の記事にも「国民を守る日本へ」ということで国民を守るために乗り越える壁があることを指摘していたが、今年は更に踏み込んだ内容になっている。具体的な懸念として中国という国を持ち出し、また、アメリカ・台湾との関係にも触れている。
内容的にはこれらの国々のことではなく、日本という国が平和を維持するためには国内だけに目を向けているのではなく、国際情勢に能動的に関わる必要があることの重要性を述べている。

二面以降の記事

これ以外の記事を見ても「ソロモン諸島に安保協力(二面)」「北、軍事衛星(三面)」「ウクライナ」「イランのフーシ派(共に五面)」のように平和を脅かす記事の割合が高い。

「移民」と日本人(連載1回目)

日本の労働力不足や2024年問題を背景に外国人増加に関する連載が始まる。
初回は外国人による日本での外国免許切り替えをテーマに免許の偽造や事故率の増加などの問題を挙げている。

読売新聞

移植見送り60件超

臓器移植の実績が多い三大学(東大・京大・東北大)において臓器提供数が増加したものの、移植断念の件数も増加していることを指摘している。
臓器移植が集中することがあり、その場合に対応しきれないことがある。受け入れ態勢の強化が必要であるが、集中している大学では対応できる限界を超える手織り、改善も難しい。

二面以降の記事

二面を構成するのは「ウクライナ」「北の偵察衛星」「ガザ地区の戦闘」と平和に関する記事が多く、次いで「新成人最小人口」「男性育休」という人口減少に関連した記事構成になっている。

社説「磁力と発信力を向上させたい」

昨年は「民主主義勢力が世界的には少数派になりつつあること、新しい秩序作りの出発点に立っていること」を指摘していたが、今年も方向性としては新たな時代を切り開くために必要なことを指摘している。
技術の発展と暴力が同時並行的に進行する中では法や宗教に加え、イデオロギーも超えた深い観点からの理念が必要としているが、そこで挙げているのが「共通感覚」である。人類が結束する原点になりえるのが人道・平和・自由を求める共通感覚であり、日本はその旗振り役になるにふさわしいとしている。
内なる力を向上させるのも重要になるが、そこでも日本は外国と比べて優れた内なる力を持っている。ただし、その力を十分に生かし切れていないので、そこは点検すべき事項と指摘している。
振り返りの必要性を説いている。持つ日本であるが、日本人が持つ国際世論の形成が必要になるが、我また、人間の尊厳を冒す恐れのある技術や研究や、静かな有事と表現している著しい人口減少に関しても警鐘を鳴らしている。

毎日新聞

遮音社会(連載一回目)・消滅自治体1000超

遮音社会

他者の声に耳をふさいぐ=遮音が誤解や分断を生んでいないかということで社会面にまたがって述べている。

消滅自治体

増田レポートの発表から10年、地方創世の取り組みが十分な成果を上げていないことを受け、新たな課題として移民受け入れの考え方や仕組みの構築などの必要性を三面にまたがって述べている。

社説「人類の危機克服に英知を」

欧州と中東の戦争が続き、国際社会は人類の危機に直面している。これを克服するためには国家中心から人間中心の視座に転換すべきで、他社との共生を模索する英知が求められているとしている。

朝日新聞

はちがけ社会~縮小の先に

2040年には現役世代が今の8割に減るため、これまでのあたりまえが通じなくなる中で、いかに生きるべきかを一面から三面にかけて述べている。
二面には建設業界の孫請けからフードデリバリに転換したことで自分で仕事を選べるようになった事例を掲載しているが、最後は「金さえよければ戻りたい」と締めており、この取り組みが明るい好事例として紹介しているわけでもない。

三面面以降の記事

三面の残りスペースには「北の軍事衛星」「ロシア南西部で死者」「パレスチナ」「新成人の人口減少」が掲載され、国際面には「私のスイッチ~人生の決断」として人生の進路を転換した事例を紹介している。

社説「暴力を許さぬ関心と関与を」

紛争が続く中で水、食料や社会インフラが崩壊し、当事国の報道官の物言いも平時では受け入れられないものになっている。
この状況を改善する一つの方法として国連の機能強化が考えられる。
また、このような状況になるには憎悪と不振の蓄積という予兆があるので、争いの芽を摘む関心と関与を忘れてはならないとしている。

総括

昨年の元日の朝刊を読み返してみると全ての新聞が「民主主義の危機」に類することを述べていたが、今年は「政治とカネ」「平和」を全ての新聞が述べている。

昨年は「民主主義の危機」の前には「国の仕組みとして民主主義が崩壊する予兆」が現れることを述べていたが、今年は「平和の危機」の前にも「平和が失われる予兆」があることを数紙が述べている。
更に現時点では部分的にその一線を越えてしまったが、人類はこれからどうあるべきかを訴える記事が多い。
ここで求められるのは法令順守というような一般的なことではなく、それを超越した視点を持つことが必要であることも各誌で共通した見解である
この紙面の流れから見ると、来年は日本も平和を脅かす事象に日本も巻き込まれる伏線が張られたといえるだろう。
また、日本国内に目を転じると、政治とカネの問題が大きな話題になっている。これは政治資金規制法の観点からのみ問題視している方も多いようだが、国内でも「民主主義の危機」を引き起こす要因が広まりつつあると捉えると看過できる事象ではない。
実際に、国会議員以外でも議会を軽視する首長、法を軽んずる政治家をこれだけ目にする年もないのではないか。

なお、例年は各誌の論調の違いや取り扱うテーマの違いを楽しめたが、今年は「平和」と「政治家とカネ」、その次に「人口減少」が来て、お決まりのスポーツ選手が登場するというパターンばかりで各紙の比較が全く面白くない年であった。
が、もしかすると、深い視点で論ずることが制限されるほど、我が国は危ない方向に向かっているのではないかという危惧も感じなくはない。