なぜDXに組織の変革が必要か?

DXの定義

経済産業省が策定した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」にではDXが以下のように定義されている。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活⽤して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変⾰するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業⽂化・⾵⼟を変⾰し、競争上の優位性を確⽴すること

経済産業省「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」

 ここで組織の変革の必要性が謳われている。組織というと「デジタル活用を推進する部門の設立」をイメージされることが多いが、デジタル化を推進する部門ではなく業務を遂行する組織自体の変革が必要である。

事例「組織の見直しとデジタル活用」

当社で「組織の変革とデジタル活用」を同時に推進した事例として以下のようなものがある。
A社の増収増益を続け、経営は順調であった。組織体制はしっかりしており、業務マニュアルも完備され、全社員が毎日日報を作成し、報連相も徹底していた。表面上は全く問題がなかったが、資材の調達漏れによる納期遅延や、請求書の発行漏れによる売り上げの回収遅延が多発していた。
業務を分析の結果、メールでの報連相は徹底していたが故に、その情報量が増加し、管理職が情報を管理しきれなくなったことが大きな原因の一つであった。
このケースでのデジタル活用としては、報連相の内容によって「チャットツールの活用と、TODOソフトや業務管理ソフトの連携」を行うことに改めた。また、それと共に、管理職に集中していた権限を分散することと、現場と管理部門との役割を見直すことも行った。これにより、調達遅延や回収遅延の発生防止と共に、社内全体に余裕ができたことで今まで以上に業務をこなすことが可能になった。

チャットの活用が解ではない

このような事例があると「チャットは有効」という事例として紹介されていしまうが、ポイントは丁寧に報連相を行っているという組織風土を背景に、「部門の役割分担の見直し」「部門内の権限委譲」と「コミュニケーション内容に応じたツールの使い分け」を行った点にある。