混乱期の事業の取り組み方・考え方
ものづくり補助金や小規模事業者持続化化補助金など、企業の販路開拓や新商品の開発を支援する制度は以前から用意されているが、その採択基準の中に「コロナ対策であれば加点」されるようになっている。
このような補助事業を活用して企業の負担を軽減した上で業績回復に取り組むことは有効である。
しかし、現在のように市場が混乱し先行きが不透明な場合は、市場の変化に柔軟に対応することが重要であり、「思い切った大きな取り組み」よりも、「小回りの利く小さな取り組み」を優先したほうが良い。
これは東日本大震災の時の対応を振り返っても言えることである。
補助事業の特性
補助事業を活用した取り組みもその事業者の中では「小さな取り組み」かもしれないが、施策を活用するためには「事業計画書を提出→補助事業として採択→事業への着手」という手続きが必要で、計画策定から着手までは1~2か月を要する。
また、その事業が終了した後に「事業結果の報告→補助金の支給」という流れになるが、事業終了から入金まで1~2か月を要する事が多い。
また、当初の計画から取り組み内容を変更するには届け出が必要なケースもあり、「柔軟な対応」が出来るとはいいがたい。
業績回復への取り組み
業界の動向が把握できているのならともかく、混乱期に取り組む商品開発・販路開拓は「柔軟性」が重要で、そこに補助金を活用することはあまり良い方法とは言えない。
コロナ対策として用意されている補助事業はあるものの、これらを活用するよりも、自社の資金(手持ち資金や借入れなど)で取り組んだ方が自由度が高い。
自社資金であれば取り組み内容を途中で変更したり、一度取り組んだものの成果が出なければ撤退したりという柔軟な対応が可能である。
また、コロナ対策にも組み込まれている「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化化補助金」、「IT導入補助金」は昨年も募集されていたものであるが、今年度から以下のような特徴がある。
(1)1年間のうちに複数回(3~4回)公募
(2)年度内に採択されるのは1度だけ
(3)年度をまたがって事業をすることが可能
昨年までと大きく異なるのが(3)である。従来は年度内に補助事業を完了させる必要があり、「採択されて1~2か月で事業を終了させないといけない」というケースがあったが、今年度からはどの回で採択されようとも採択から事業完了まで十分な時間が確保される。
この制度は今後3年間は続く予定なので、ここ数年に関しては自社事業の最適なタイミングで補助事業に公募する事ができる。
混乱期という社会的な背景、および補助金の特性を勘案すると、まずは自社資金で暫定的な取り組みを行い、ある程度世の中が落ち着き、事業の方向性も見えてきた時点で、会社の方向性を左右するような事業の再編成や補助金の活用を検討することが理にかなっているのではないだろうか。