キャッシュレス決済の動向~流通系の登場で競争のポイントが変わるのか?

 消費税増税に伴うポイント還元事業や、政府によるキャッシュレス決済の推進など、公的な施策の後押しも受けてキャッシュレス化が進んでいる。クレジットカードや交通系ICカードもキャッシュレス決済の一つではあるが、PayPayの大型キャンペーンの影響もあり、ひと頃は「手軽に決済が可能で店舗側の対応も簡単なQRコード決済が中心になるか」という感があった。が、ここにきて流通系も続々とキャッシュレス決済に参入し始め、様相が変わってきた。

 「様相が変わった」というのは単に競争が厳しくなったという意味ではなく、競争のポイントが変わってきたことを指している。数か月前は「店舗側の導入が楽なPayPay、割り勘や送金などに特徴を持つLINEペイ」というように決済機能を中心にそれぞれの優劣が論じられることが多かった。が、ここにきて流通系も電子マネーに参入し、機能面での差異が少なくなった、各社ポイント還元を始めた、アプリと絡めた販促手段が増え始めた等の要因で、技術面よりも商業面が差別化のポイントになり始めている。

 各種の電子マネーは流通系が電子マネーに参入したことで、変わってきたことがもう一つある。ポイント還元事業という政策の影響もあり、キャッシュレス決済は非常に低い手数料に抑えられている。QRコード決済は手数料0%となっているが、将来的にはクレジット決済に代わるものとして手数料が発生する可能性が高いと捉えていたが、ここもどうなるか分からなくなっている。現在の流通系電子マネーは「キャッシュレス決済で収益を獲得」が目的ではなく「決済を通じた顧客情報の獲得」が主目的になっている。7ペイやファミペイなどはポイント還元しているnanaco、Tポイントの後継になるものなので、これらの手段になったから決済手数料を徴収という動きは(ここしばらくは)あり得ないだろう。

  技術的に注目されたQRコード決済が注目されていたが、技術の革新性や操作性ではなく、「どれだけの店舗で利用できるか」の戦いになり始めており、 クレジットカードのVISA・MASTER・JCBなどが浸透し始めてきた頃や、各種ポイントカードが乱立していたころの争いに酷似している。消費税増税に伴うキャッシュレス・消費者還元事業の影響で決済端末導入に伴う中小企業の費用負担は軽減されている。ハード的な負担が抑制されるとなると、それぞれの決済手段がどれだけ魅力的な価値を消費者に提供できるかが競争のポイントになるだろう。