宿泊業の現状と補助金の是非
コロナ禍では飲食業、宿泊業が苦戦していたが、その影響もほぼ無くなったといってよいだろう。宮城県内のニュースでも「既に過去最高益」という宿泊業者や「ホテルが高くて仙台市内では旅費規定内で泊まれるところを探すのが大変」というビジネスマンも登場していたので、「宿泊者がいない」という状況は終わり、新たなフェーズに移行したといってよいだろう。この中で、宮城県では「2024年秋・冬観光キャンペーン 冬のみやぎ旅キャンペーン」として、宿泊クーポンを発行するというコロナ禍に行われていた施策を再開している。
宿泊者がいない状況であれば有効だが、宿泊者が戻っている状況では「クーポン目的の一見さんが増え、なじみ客やリピーターが宿泊できなくなる」という弊害も大きく、宿泊業者の中にはこれを否定的に見る事業者も多い。
ChatGPTの結論:「提示された補助金は非効率」
このようなバラマキ施策は国に限らず地方でも多発される傾向にあり、賛否両論がある。このテーマについてChatGPTに分析させたところ、以下の結論が得られた。
分析結果:提示されたような補助金は非効率
- 費用対効果の低下・・・制限なしの施策は、資金が分散し、効果の低い地域や施設にも補助が行き渡る。その結果、全体の効果が希薄化し、限られた予算の無駄遣いになる可能性がある。
- 長期的な自立性の喪失・・・宿泊業者が補助金に依存することで、自立的な経営努力や効率化へのインセンティブが弱まる恐れがある。特に、宿泊価格の競争が歪められると、市場原理が損なわれる。
- 需要供給の不均衡・・・宿泊割引による需要増加が供給能力を上回ると、宿泊施設の稼働率は一時的に上がるが、サービスの質が低下し、リピーターの獲得に悪影響を及ぼす可能性がある。
この結果を経済政策に造詣の深い複数名で議論したところ、概ね「ChatGPTの結論が妥当」との意見が得られ、人間が考えるよりもAIに考えさせた方が適切な経済政策を作れるのではないかとの見解も示された。
条件を追加すると結論が逆転
この分析にあたっては客観的なデータを与えただけであるが、ここにいくつかの条件を追加してみた。具体的な追加内容を記述することは差し控えるが、事業者・業界団体・県職員等の立場についてインターネット上にも公開されている情報から「それぞれの立場の違いを表すのに特徴的なもの」、かつ「誰もが納得できるようなもの」をいくつか選択してみた。
これを加味して検討させた結果、以下のような回答になった。
分析結果:非効率ではあるが政治的に回避困難
- 補助金支給は非効率的・・・長期的には業界の依存体質を助長し、根本的な課題解決を遅らせるため、経済的には非効率と評価される。
- 政治的・社会的観点では必要性がある・・・短期的な地域振興や雇用確保のため、補助金支給は事実上避けられない選択肢といえる。
分析結果が示唆するもの
この分析事例から、AI活用の可能性と限界が浮き彫りになったといえる。
- データドリブンな客観性の利点・・・AIは感情や個人的な利害関係に左右されず、純粋なデータに基づいて分析を行うため、理論的な最適解を見出す能力に優れている。
- 現実の複雑性への対応・・・一方で、現実の政策は理論だけでは動かない。社会の仕組みや業界の情報等の現実的な条件を追加すればより実践的な分析結果を得ることはできるが、この条件を与える人間の政治的センスや倫理観が不可欠である。
AIと人間の協働が鍵
AIは、政策決定プロセスにおいて理論的な基盤を提供する重要なツールとなり得る。しかし、最終的な判断を下すのは現場の事情や倫理的観点を熟知した人間であるべきだ。補助金施策のような複雑な問題に対しても、AIを活用することでより適切な政策運用が可能になるのではないだろうか。