中小企業におけるIT導入の効果~全取協アンケートより~

平成25年に行われた(公財)全国中小企業取引振興協会の「中小企業の情報利活用に係る実態調査」において「情報化の目的と、その効果」のアンケートがなされている。

IT導入の目的と評価

その結果を見ると、「業務の迅速化」や「社内情報の共有化」は「十分な効果があった」との回答が多いものの、「売上の拡大」、「顧客の拡大」等になると「効果があった」と回答する比率が低くなっている。

全体的にこの結果を見ると、「業務の迅速化」、「社内情報の共有化」という内向きの施策は成功率が高いが、肝心の外部に対する施策である「売上の拡大」、「顧客の拡大」の比率が低くなっている。

この結果から、「社内向けのIT活用は成功しやすいが、社外向けで成果を出すのは難しい」という結論が導かれそうである。が、意地悪な見方をすれば、「業務の迅速化」、「社内情報の共有化」という自己満足で評価できることに関しては、業務全体から見た効果があったかどうかを検証することなく「効果があった」と回答していると判断することもできる。

実際に、業務全体の処理時間は短縮されていないのに「(コンピュータの処理能力が早くなったから)業務が迅速化した」、社内で情報を共有することで新たな価値や効果を生み出してもいないのに「(ファイル共有をかけたから)情報共有化ができた」と言っている事例を見かけることは多い。

同協会のアンケートではこのように意地悪な解釈は行っていないが、「業務の迅速化」、「情報の共有化」で「効果があった」と回答した企業の実態をもう少し深掘りしてみたいものである。